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新山口駅利用者の同日行動をアニメーションで可視化  「スマート”ライフ”シティ」実現に向けた取組をデータで裏付け

新山口駅利用者の同日行動をアニメーションで可視化  「スマート”ライフ”シティ」実現に向けた取組をデータで裏付け

山口市

2021.12.15

KEYWORDS

  • #スマートシティ
  • #人流分析
山口市

山口市は人口約19万3千人の都市です。山口県内最大の面積を有し、南は瀬戸内海、北は萩市、さらに島根県にも接しています。また、大内氏時代や明治維新関連の歴史や文化資源が今に残されており、湯田温泉などを含めて、観光地としての魅力も備えています。さらに、プロサッカーチーム レノファ山口FCのホームタウンの1つでもあります。

山口市位置図

山口市では、デジタル化や地域脱炭素への対応を始めとしたスマートシティの推進を通じて、地域課題の解決や地域経済の活性化を図り、山口市における地方創生の取組を更に加速化させるため、現在、山口市のスマートシティ推進の方向性や取組等を示す「山口市スマートシティ推進ビジョン」を策定中です。

また、スマートシティ推進ビジョンにおける重点プロジェクトの一つに、「新たな価値創出・新たなサービス提供プロジェクト」を位置付け、行政や民間が管理する官民データを連携、蓄積させ、ビッグデータ等を活用する取組の検討を進めています。

今回はそうしたデータを活用した取組として、山口市とunerryが実施した、市内主要駅の新山口駅と、隣接する周南市にある徳山駅を対象とした駅利用者の動向調査を事例として紹介いたします。

取材にご協力いただいたのは、山口市 総合政策部 スマートシティ推進室 永久 真様と、小宮 純香様です。

<この記事のポイント>
● GPSデータを活用し、駅利用者の同日行動比較&利用者分析を実施
● 分析ヒートマップを資料に掲載 アニメーションは庁内プレゼンでも好評価
● 「スマート“ライフ”シティ」実現に向けては、行政 ✕ 民間データの活用も重要に

新山口駅と徳山駅の利用者動向をGPSデータで分析

山口市では、市全体の発展、そして、県全体の発展に向けて、平成20年頃から、県央部に位置する新山口駅やその周辺市街地を中心に、アクセス機能や交通結節機能を生かした魅力的な都市空間の形成を図る取組を進めてこられました。

現在、今後の20年を見据えた具体的な取組等の検討を進められている中で、新山口駅は“県の玄関”としての機能を十分に発揮しているのか等の現状把握を行うべく、今回ビッグデータを活用した人流分析調査を実施しました。

本調査では、unerryの「Beacon Bank」と連携するスマートフォンアプリを利用するユーザーにおける、利用許諾済のGPSデータを活用。同じ県央部圏域に位置し、同じく新幹線の停車駅であり、駅の乗車人員数も同程度である徳山駅を比較対象として選定した上で、同日行動比較や利用者分析(性別、年代、居住地、勤務地)を行いました。

まずは、2019年11月1日~2020年10月31日の期間において、新山口駅、徳山駅各駅を訪れた人の同日の行動範囲をアニメーションとヒートマップで可視化しました。


新山口駅利用者の同日行動をアニメーションで表現(2020.10)

 

「(仮称)山口市都市核づくりビジョン(素案)」より

新山口駅と徳山駅利用者の同日行動を比較すると、隣県の福岡や広島での行動範囲は両駅利用者で差が小さい一方、山口県内の行動においては新山口駅利用者が広域をカバーしていることが分かりました。

また、利用者分析では、各駅を訪れる利用者の性別、年代、居住地、勤務地について位置情報ビッグデータをAI解析することで推定しました。

※本施策においては名前や電話番号など、個人を特定できる情報は一切取得・使用しておりません。

性別、年代、居住地、勤務地といった利用者分析においては、新山口駅と徳山駅利用者で大きな差異は見られないにも関わらず、新山口駅と徳山駅を比較した場合、県内の交通のハブとなる機能を有するのは新山口駅でした。

新山口駅が実際に交通の要としての役割を果たしていることがデータで裏付けされ、引き続き、新山口駅を中心に据えたアクセス機能・交通結節機能の更なる強化が県全体の発展に寄与するという示唆を得られました。

INTERVIEW

利用者の動きをアニメーションで表現 直感的で納得感あるプレゼンに

山口市 総合政策部 スマートシティ推進室 永久 真様、小宮 純香様

――今回の、お取り組みについての経緯と、率直な感想を教えてください。

永久様:
駅利用者数については、統計データで把握していたものの、利用者の前後行動がわかるデータがなく、実際に新山口駅が県の玄関として交通結節機能等を発揮しているのか検証ができていませんでした。

今後のまちづくりの方向性や取組等の検討に向けて、まずは、駅利用者の動向を把握することが重要であることから、ビッグデータにより利用者の動向を把握しようということになりました。そして、月間200億件以上の人流ビッグデータをAI解析されているなど、調査実績も豊富であるunerryさんに調査を依頼しました。

今回の調査にあたって、私たちとしては「新山口駅は交通の重要な結節点であり、市民や観光客、ビジネス客等の利用者は、近隣の宇部市や防府市をはじめ、萩市や長門市など広域に移動している。一方で、徳山駅については、周南市内に支店や営業所、コンビナート企業等が集積していることから、利用者の多くは周南市内の移動に留まっているのではないか」と仮説を立てました。

アニメーションやヒートマップから見えた調査結果については、仮説通りで驚きました。

また、unerryさんからも、調査結果を踏まえ「新山口駅を中心とした交通結節機能・アクセス機能の更なる強化に係る取組を推進することが県全体の発展に寄与するものと考える」とのご提言をいただきました。

こうしたことから、新山口駅周辺においては、引き続き、“県の玄関”として県央部圏域の更なる発展に貢献するため、交通結節・アクセス機能強化に向けた取組の検討を進めているところです。

――アウトプットはどのように活用されたのでしょうか?

観光名所の一つ 五重塔

永久様:
今回の調査では、新山口駅と徳山駅の利用者が同日に行動した範囲の可視化と、そのアニメーション動画の作成をお願いしました。

行動した範囲の可視化については、山口県の地図にヒートマップがプロットされており、行動範囲が一目でわかるため、大変分かりやすい分析レポートでした。現在策定を進めている「(仮称)山口市都市核づくりビジョン」の資料にもデータを使わせてもらっています。

また、移動状況が分かるアニメーション動画については、庁内等のプレゼン等で活用したのですが、ポイントデータで動きを表現できたことで、視覚的に分かりやすく、納得感もあり、大変好評でした。こういったデータは行政、民間問わず、様々な場面で活用が出来るのではないでしょうか。

――unerry担当者からは、どのようなサポートがありましたか?

永久様:
本市の調査目的に対して、自分たちとしてはこういったアプローチの仕方がある、例えばこういった方法での調査はどうかなど、これまでの調査実績のサンプル等も踏まえながら、丁寧に御説明いただくとともに、調査方法等について御提案をいただき、大変助かりました。

また、業務完了後も、分析結果のレポートについて、分からない点があればその都度、丁寧に御説明いただき、皆様の対応には大変満足しております。

――山口市が目指す、「スマート“ライフ”シティ」の目指す姿やその実現に向けたアイディアについて教えてください。

小宮様:
本市では現在、スマートシティ推進の方向性やその取組等をお示しする「山口市スマートシティ推進ビジョン」の策定を進めています。

本ビジョンにおいては、目指すまちの姿を「誰もがいきいきと暮らせる持続可能なまち山口~スマート“ライフ”シティ山口~」とし、生活者の視点を第一に考え、デジタル化等を通じて、市民の皆様の安全安心や生活の質の向上、地域経済の活性化を図ることとしております。

「スマート“ライフ”シティ」の実現に向けては、行政が持つデータだけでなく、unerryさんが蓄積しているリアル行動ビッグデータのような民間の保有データも、適切かつ効果的に活用していきたいと考えています。

レトロな雰囲気のSLやまぐち

例えばですが、御社がお持ちの人流データと交通データを活用することで、交通渋滞を緩和するための行動変容を促進する取組や、人流データと購買データを活用することで、消費や回遊等を促進する取組等ができるのではないでしょうか。

さらに、本市にはレノファ山口FCのホームスタジアム(「維新みらいふスタジアム」)もありますので、レノファ山口FCと連携し、アウェイサポータに対するマーケティング等の取組もできたら面白いと考えております。

unerryさんにおかれましては、引き続き、本市のスマートシティの連携事業者としてご協力をよろしくお願いいたします。

[取材日] 2021年11月18日 ※内容は取材当時のものです。

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