
訪日外国人の”利用実態”をデータで把握 京王電鉄が人流ビッグデータでインバウンド戦略の基盤を構築
京王電鉄株式会社
2026.08.07
KEYWORDS
- #Beacon Bank for インバウンド
- #ダッシュボード
- #人流分析
- #鉄道

京王電鉄株式会社は、新宿を起点とする京王線と渋谷を起点とする井の頭線を運営し、東京都西部から神奈川県北部を結ぶ総延長84.7kmの鉄道会社です。多摩ニュータウンなどからの通勤・通学輸送を主軸としながら、世界屈指の登山客数を誇る高尾山やよみうりランドといった行楽地への輸送も担っています。コンパクトな路線ならではの機動力を活かし、沿線の多様な魅力を発信する取り組みを積極的に展開しています。
同社では近年、回復基調にある輸送人員のうち訪日外国人(インバウンド)の動向を正確に把握し、需要獲得に向けた施策に活かしたいという課題を抱えていました。本記事では、unerryの人流ビッグデータを活用したインバウンド分析ダッシュボードの導入事例をご紹介します。
取材にご協力いただいたのは、京王電鉄株式会社 鉄道事業本部 計画管理部 企画管理担当 加藤 将吾様、羽下 敏樹様です。
● 乗降データでは把握できなかったインバウンドの利用実態をダッシュボードで可視化。
● 国籍・路線・スポット別など多角的な視点で分析。他社路線との横断比較で施策の検討材料も獲得
● 沿線への誘客施策の立案・効果検証に活用。インバウンドを含む来街者獲得に向けたデータドリブンな取り組みを推進
乗降データでは訪日外国人と日本人の利用を識別不可能 インバウンドの全体像が掴めなかった
コロナ禍からの回復とともに訪日外国人の増加が実感される一方、その実態を正確に把握することは難しいという課題がありました。鉄道会社では自動改札の通過数などを基にしたデータ分析行っていますが、訪日外国人の多くは日本人と同じ交通系ICカードで乗車し、券売機で切符を購入されるため、乗降データからインバウンド利用者を識別することは難しく、人数・国籍・移動経路といった利用実態をつかむ手段が乏しい状況でした。
効果的な施策を打つには、まず現状把握が不可欠です。そこで京王電鉄では人流データを活用したインバウンド分析ダッシュボードを構築。訪日外国人の利用人数、主要スポットへの来訪動向などを把握できる体制を整えました。
ダッシュボードで可視化された”気づき” 国籍構成から路線利用傾向まで
unerryとの協働で構築されたインバウンド分析ダッシュボードは、多様な分析軸を備えています。
● 沿線別インバウンド客数(期間計・月次):国籍別に主要人数を横断比較
● 国籍構成比:路線ごとの国籍割合
● スポット別来訪者数(期間計・月次):沿線施設への来訪動向
● スポット別利用路線比率:各スポットへのアクセス経路
● 宿泊エリア(ヒートマップ):インバウンド来訪者の宿泊地分布 など

ダッシュボードを通じて、訪日外国人の沿線利用実態の全体像を把握できるようになりました。他社路線と横断比較できる点も特徴で、自社路線との相対的な位置づけや、インバウンドが多い路線との差分を検討する材料として活用できます。また月次データの推移を追うことで、特定スポットへの来訪急増といった兆しを早期に捉え、機動的な対応を可能とする体制作りができました。
INTERVIEW
データをハブに、京王グループ全体の”稼ぐ力”を高める
京王電鉄株式会社 鉄道事業本部 計画管理部 企画管理担当 加藤 将吾様、羽下 敏樹様
- ――京王電鉄の特徴や魅力について教えてください。
-
加藤様:
- ――ご所属部署のお仕事について教えてください。
-
加藤様:
- ――取り組みを始める前の課題感を教えてください。
-
加藤様:
- ――今回の取り組みについて率直な感想をお聞かせください。
-
羽下様:
- ――今後、ダッシュボードをどのようにお使いいただくご予定ですか?
-
加藤様:
- ――インバウンド分析を通じて、どのような施策につなげていきたいとお考えですか?
-
羽下様:
- ――unerryに期待することや、今後の展開についてお聞かせください。
-
加藤様:
新宿を起点とする京王線と、渋谷を起点とする井の頭線の2路線を運営しています。通勤・通学路線としての性格が強い一方、高尾山やよみうりランド、サンリオピューロランドといった行楽スポットへの輸送も担っており、エリアによって多彩な顔を持つ路線です。
路線延長は他社と比べるとコンパクトですが、それが逆に強みにもなっています。機動力を活かしたきめ細かい取り組みを実施できる環境があります。また、鉄道だけでなく、不動産や商業施設、ホテルなど沿線の暮らしに関わる事業をグループで展開しているので、鉄道を起点にさまざまな形で沿線の魅力を発信・強化できる点も、特徴だと考えています。
<京王2000系電車 撮影者:C.Y>
計画管理部 企画管理担当は、日々の輸送人員や運輸収入の分析、将来の事業計画・中長期計画における収入推計を担当しています。国土交通省との窓口として運賃・料金の申請などに関する業務なども担い、鉄道事業の計画面を幅広く担う部署です。
今回のインバウンド分析も、鉄道部門のデータをさまざまな部門の業務に活かしていくための取り組みの一つです。鉄道データ活用を社内に広めていくことも、私たちの役割だと考えています。
訪日外国人のお客様の利用実態、つまり客数・国籍・移動経路などを具体的に把握できずにいました。訪日外国人の方も日本人と同じように交通系ICカードで乗車されることが多く、乗降データから識別することができません。外国人向けの企画乗車券の発売枚数は分かりますが、利用者の一部にとどまり、全体像をつかむには不十分でした。
今後、人口減少が予想されるなかで、訪日外国人を含めた沿線外からの来街者を呼び込むことは重要です。しかし現状が把握できていなければ、効果的な施策を打つことができません。複数社を比較検討するなか、データ精度の高さからunerryさんにお願いすることにしました。
「今まで見えなかった部分が見えてきた」というのが一番の成果だと思っています。データのチューニングやグラフの見せ方など、ダッシュボードを作る段階からこちらの意向を丁寧に汲んでいただきました。
データを通じて新たな発見もありました。中国・台湾などアジア圏の方が多いと想定していましたが、実際には欧米圏からの方も多いことがわかりました。また、他社路線と横断比較することで、自社の相対的な位置づけを客観的に把握できます。
まだ手探りの部分もありますが、OD(出発地・目的地)単位で「どこからどこへ移動している訪日外国人が多いのかを把握したい」といった要望も出てきています。実態把握の取っ掛かりができたので、そこを出発点にどう発展させていくかを考えているところです。
現在は私がメインで操作し、社内各部署からの問い合わせに対応する形で活用しています。データをダウンロードして資料にまとめたり、実際にページを見せながら説明したりしています。今後は企画券の発売や移動需要喚起のための施策を行う部門や広報部門とも連携を広げ、データをハブに各部署の協力関係を繋いでいくような役割を担えたらと考えています。
訪日外国人の方が関心を持たれるスポットやテーマをいち早く把握し、効果的な施策を検討しているところです。日本文化をテーマにしたイベントの企画や、ご好評をいただける企画券の作成、PR動画の制作といったことが短期的な取り組みです。
訪日外国人の鉄道利用状況をデータで把握しながらPDCAサイクルを回し、インバウンドを含む沿線外からの来街者を呼び込む取り組みを継続的に発展させていきたいと考えています。
新機能のリリースや粒度の細かいデータの拡充など、より深い分析が可能なサービスの提供を期待しています。新しい技術が実装された際にはぜひ情報を共有していただきたいですね。
今回はインバウンド分析が起点でしたが、社内でデータを活用しきれていない部分がまだあるため、有用なデータをより広く活用していくことが目標です。京王電鉄の営業力を高めるとともに、沿線の魅力あるスポットをさらに多くの訪日外国人のお客様にご紹介していければと考えています。
[取材日] 2026年6月9日 ※記載内容は取材当時のものです。
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