事例紹介トップへ
年間2,300万人の人流を顧客価値へ。新宿サブナード、人流データからはじまる顧客起点経営

年間2,300万人の人流を顧客価値へ。新宿サブナード、人流データからはじまる顧客起点経営

新宿サブナード株式会社

2026.09.11

KEYWORDS

  • #人流分析
  • #商圏分析
  • #店舗分析
  • #来館者分析
subnade

新宿駅からほど近い場所にある新宿サブナードは、約4万6,000平米の敷地に約100店舗のテナントと400台の駐車場を備える、東京都内でも有数の規模を誇る地下街です。新宿サブナード株式会社は、モータリゼーションを見据えて設計された50年前の開業以来、この施設を運営しています。

年間2,300万人が訪れる施設へと成長する一方、これまで来館者像の実態を把握するのは難しく、長らく経験と感覚による仮説の域を出ませんでした。この状況を変えるべく始動したのが、unerryの人流データを活用した分析プロジェクトです。本記事では、新宿サブナードが人流データをどのように意思決定に取り入れていったのか、分析結果の一部やその活用方法をご紹介します。

事例取材にご協力いただいたのは、新宿サブナード株式会社 取締役 事業本部 計画・推進部長 寺島篤様です。

 

<この記事のポイント>
● 男女比1対1、30代以下が7割。来店1時間前の居場所まで、感覚に頼っていた来館者像が具体的に見えてきた
● 購買客の7割が「3ヶ月に1回きりの利用」。リピート化が最重要課題に
● 店長会や経営陣が同じデータで議論できるように。広告提案でも、代理店が驚くほどの説得材料に

新宿サブナードを訪れる年間2,300万人。顧客像の把握は感覚によるものだった

新宿は、多様な人々が行き交う街です。開業当初、新宿サブナードの店舗はすべてファッション関連でしたが、現在はレストラン、アパレル、ガチャガチャや物産店まで幅広いテナント構成へと姿を変え、新宿の街を訪れる多様なニーズに応えています。このように多様な店舗構成を持つサブナードでは、来館像を一括してとらえにくかった事情がありました。

2025年には約2,300万人が訪れた新宿サブナードですが、実際にどんな人が訪れているのかは、これまで感覚に頼るしかなく、掴みきれていませんでした。コロナ禍以前にアンケート調査を実施したこともありましたが、その後テナント構成が大きく変わり、当時のデータを活かせる状況ではなくなっていました。 

人流データで見えてきた、新たな来館者像

人流データを導入したことで、「どのようなお客様が、いつ、どこから来て、どのように利用しているのか」が具体的に見えてきました。

今回の調査では、広域エリアはGPSデータ、新宿サブナード館内はビーコン技術を用いて分析を行いました。館内では、8割以上のテナントでビーコン機能を備えた決済端末(stera terminal)がすでに導入されていたことも追い風となり、大きな追加投資をせずに、テナント間の回遊など詳細な分析まで行うことができました。

①来館者の男女比が1対1で、30代以下が全体の7割を占めていた

 

②来館者の居住地(推定)は比較的所得水準の高いとされるエリアからの来館が多い

 

③来館1時間前は山手線および西武新宿線沿線エリアにいる来館者が多い。来館者はサブナードだけでなく、歌舞伎町エリア、新宿三丁目エリアも中心とした回遊が見られる

 

④カフェやレストランを利用した人の9割は、店舗も訪れる

INTERVIEW

バラバラだった見方が、共通言語に。人流データが変えた新宿サブナードの意思決定

新宿サブナード株式会社 取締役 事業本部 計画・推進部長 寺島篤様

——unerryの人流データ活用に至った背景について教えてください。

寺島様:

新宿サブナードには、どこから、どんな方が訪れているのかという明確な根拠がなく、感覚頼みの運営となっていました。新宿駅に直結した立地のおかげで、特別なことをしなくても人は来てくれますし、暑い日や雨の日には地下に人が流れ込みます。ただ、そうした環境に恵まれているだけで満足していてはいけない、とも感じていました。

予算をかけてプロモーションや販促を行うのであれば、データをもとに、テナントの皆様がベストな形で経営できるようサポートしたい。マーケティングによって”顧客”をつくり、お客様お一人お一人の満足度を高めていくことこそが、本来あるべき姿だと思っていました。以前から気になっていたunerryの人流データ分析を、今回お願いすることにしました。

――分析結果の中で、特に印象に残っているものはありますか。

寺島様:

男女比が1対1で、30代以下が全体の7割というのは、正直かなり意外でした。これまでの感覚とは違う”顧客”が見えてきたということだと思います。

また、お住まいのエリアから比較的購買力の高い層が多いことも分かりました。単価の高い商品を扱う店舗でも、受け入れられやすい客層だと言えます。周辺再開発の影響で若い世代の来館が増えていることも、データで見えてきました。
お客様像が見えてくると、どんな商品やサービスを提供すれば満足いただけるのか、というヒントも見えてきます。アンケートだけでは、なかなかそこまで踏み込めなかった部分だと思います。

「来店の1時間前にどのエリアにいたのか」まで見えたのにも驚きました。山手線沿いが多いのか、新宿三丁目のあたりが多いのか。そこまで広く見えると、お客様が普段どういう生活圏で過ごしているのかが、立体的にわかってきます。1時間前を見るデータは珍しいようで、皆さん興味を持って聞いてくれます。

レストラン・喫茶を利用した人の9割がショップも利用している、というデータも印象的でした。レストラン・喫茶を起点にしたプロモーションは全体への相乗効果が見込めるので、重点的に仕掛けていきたいと思いました。

――分析結果を、どのように活用されていますか。

寺島様:

分析結果は店長会に持ち込んで、テナントの皆様と共有しています。男女比や年齢層、居住エリアなど、さまざまなデータをお見せする中でも、私自身、特に手応えを感じたのが、購買データと組み合わせて見えてきた数字です。3ヶ月間の利用者のうち購買したのは21%、そのうち7割が1回きりの利用にとどまっていました。この7割のお客様が2回、3回と来てくれるようになれば、商売はもっと伸びしろがある。店舗とサブナード本体双方に大きな可能性がある。ここを共通のテーマとして共有しました。

広告営業でも使っていて、近隣施設との来館者の重複データは、提案の場でも説得力のある材料になっています。代理店の方から、「どうして他の商店街や商業施設はこういうことをやらないのか」と聞かれたこともあるくらいです。

――分析を通じて、社内やテナントの方々にどのような変化がありましたか。

寺島様:

これまでは、店長同士で話しても「沿線から来ている人が多い」「年齢層は上のほうが多い」など、それぞれの感覚に基づいた見方がバラバラで、議論の土台が揃っていませんでした。数字を共有することで、これまでの感覚で捉えていたお客様像について、同じデータを基に議論できる環境が出来ました。「この館にはこんな方が多いのか」という発見を、店長の皆さんが新鮮に受け止めてくださることも多く、モチベーションという意味でもプラスになっています。モチベーションが上がることで、数%の売上の差になって表れることもあると思っています。

同じ客層を持つ店舗同士のプロモーションなど、データを活用した取組につなげていきたいと考えています。そして最近は「自分の店にどんなお客様が来ているのか知りたい」という関心の声をもらうようになりました。

経営陣の中でも、データを通じて改めて顧客を意識するようになり、今後の施設運営や販促に生かしていく方向性が見えてきています。

データによって得られた共通認識は経営陣や店長との対話、テナント連携に積極的に活かしていきたいと考えています。

――今後の展望を教えてください。

寺島様:

お客様に、もう一度足を運びたいと思ってもらえる関係を築くことが必要だと、今回のプロジェクトを通じて改めてわかりました。天候や立地といった恵まれた環境に甘えるのではなく、マーケティングによって”顧客”をつくり、データを基にした店舗運営を考えていきたいと思っています。その手段として、顧客との継続的なコミュニケーションを目的とした独自アプリの開発も検討しています。

今後拡大が見込まれるインバウンドへの対応にも期待しています。この分野のデータ量や分析技術がどこまで進んでいくか、unerryに期待しています。

2,300万人という人流を、単なる通過人数で終わらせず、一人ひとりのお客様の価値につなげていくことを重視しています。そのために、人流データを店舗運営や販促に生かしていきたいと考えています。

これまで感覚で見ていたお客様が、データによって具体的に見えてきました。そこから店長と一緒に、店舗運営をどう変えるかを考え始めたことが、今回のプロジェクトで得られた大きな変化だと思います。

[取材日] 2026年8月6日 ※記載内容は取材当時のものです。

SHARE THIS ENTRY