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2026.03.27
うねりの泉編集部
「Be Smart Tokyo」で動き出す立川の回遊 モビリティとデータが見せた“巡る街”の可能性

多摩エリアの中心都市のひとつ、平日も週末も多くの人で賑わう街ですが、「人は来ているのに、街を回ってもらえない」という課題もありました。
「来てもらう」だけでなく、「街を巡るまち」へ。
立川ではいま、街の回遊性を高める新しい取り組みが進んでいます。東京都のスマートサービス実装促進プロジェクト「Be Smart Tokyo」のもと、人流データを活用しながら、次世代モビリティによる街の回遊を活性化させる挑戦です。
今回お集まりいただいたのは、立川商工会議所の小野 和久さん、次世代モビリティサービスを展開するBRJの小野寺 亮介さん、そして人流ビッグデータ分析を担うunerryの小坂 英智。それぞれの立場から、立川で進む「回遊づくり」の舞台裏を語り合いました。
モビリティとデータの組み合わせによって、街の回遊はどう変わるのか。その取り組みのプロセスと、見えてきた可能性を紹介します。
東京都では、先端技術等を活用した便利で快適な都市「スマート東京」が実現されることを目指しています。
本プロジェクトは、独創性・機動力にあふれるスタートアップ等が各エリアと協働することで、都民の暮らしの利便性・QOLを高める新しいサービスをスピーディーに生み出すことを目的としています。(URL:https://www.be-smarttokyo.metro.tokyo.lg.jp/)
unerryは、「スマートサービス実装促進事業者」としてスタートアップや東京の各エリアと協働し、都民の暮らしの利便性やQOLの向上につながる新しいサービスの実装を後押ししています。立川エリアでは、街の回遊性向上をテーマに、次世代モビリティによる地域活性化が進められました。人流データを活用することで、街の中で人々がどのように移動しているのかを把握し、施策の検討や実施、そして効果の検証を行いました。
回遊促進のために注目したマイクロモビリティ
立川商工会議所 小野さん:
多摩地域はベッドタウンのイメージが強いと思われますが、立川は昼間人口が夜間人口を上回る数少ない都市です。事業所も多く、駅ビルや大型商業施設もあるので、平日も週末も集客力があります。
しかし、来街者アンケートを継続的に実施する中で、「集客はできているのに、街なかで回遊してもらえていない」ことが明らかになっています。たとえば昭和記念公園には年間およそ400万人ほどの来訪がありますが、駅と公園を往復するだけで帰ってしまう人が多い。
肌感覚でも、「街の中を巡るというより、一箇所に寄って帰る街になってしまっている」という実感があります。買回りの機会を増やすため、これまでイベントやクーポンなどさまざまな施策を試してきました。集客には一定の効果がありましたが、それだけではなかなか回遊が生まれない。
どう解決するか模索する中でマイクロモビリティに注目し、BRJさんと連携したマイクロモビリティの取り組みが立川でも始まりました。
BRJ 小野寺さん:
当社は「交通空白」をどう解消するかという視点で、地域と連携しながら次世代モビリティサービスを展開しています。

立川エリアは、坂が少なく、道も広い。マイクロモビリティとの相性はかなり良い街だと思います。商工会議所さん主導の「立川MaaS推進協議会」とも連携しながら、少しずつ本格化していきました。
立川商工会議所 小野さん:
立川は街の中心機能がコンパクトに集まっている街ですが、駅から少し離れたところにも魅力的な場所があります。
市内交通は多摩都市モノレールやバスがあるものの、中心の交通動線から外れた場所にも自由に移動できる手段があれば、街の魅力に触れ、回遊につながる機会も増えるのではないかと考えました。
マイクロモビリティは当時はまだ都内でも珍しかったのですが、立川には比較的新しいものを受け入れる土壌があります。新たなモビリティの導入を商工会議所としてもバックアップしてきました。
(左から)unerry 小坂、BRJ 小野寺さん、立川商工会議所 小野さん
データで見えた「回遊の起点」
立川商工会議所 小野さん:
街の回遊を生み出すためには、人の動きを定量的に捉える必要があります。アンケート調査だけでは見えないことも多いため、「Be Smart Tokyo」事業による人流データ分析支援を受けながら、マイクロモビリティによる地域活性化事業に取り組むことにしました。
unerry 小坂:
新たなサービスの実装を通じて移動課題を解決するという考え方は、「Be Smart Tokyo」が目指す世界観に重なります。今回のプロジェクトでは、まず昭和記念公園の前にマイクロモビリティのポートを設置し、モビリティを拡充した上で、地域の既存の商業施設や交通事業者と連携した情報発信を行い、回遊を促進しました。また回遊施策を行った後にどのような変化が生まれるのかを、人流データにより検証しました。
情報配信による回遊促進施策
マイクロモビリティの利用データと人流データそれぞれで回遊の変化を確認したところ、人流データでは、特に昭和記念公園周辺では回遊率が伸び、20%程度の増加が見られましたね。若年層だけでなく、アクティブシニア層においても回遊傾向が高まる結果となっていました。

BRJ 小野寺さん:
マイクロモビリティの利用データでも、興味深い結果が出ています。短距離移動だけでなく、1時間ほどの長時間ライドが多く見られました。駅の北側だけでなく南側も含めて街を回遊しているなど、想定以上に行動範囲が広がっていました。本事業の取り組みをきっかけに、初めてマイクロモビリティに乗ったという人も多かったです。
unerry 小坂:
データを見ていると、「本当は街を回りたかったけれど、きっかけや移動手段がなかっただけなのではないか」と感じる場面もありました。マイクロモビリティは、そうした移動を支えることで、街の回遊を生み出すきっかけになっている可能性があります。
たとえば昭和記念公園は集客の中心であり、街の回遊のハブとしてのポテンシャルが高い場所です。一方で、回遊の起点になり得る場所は他にも見えてきました。立飛駅周辺の大型商業施設やスポーツ施設、公園など、街の中には人が集まる拠点が点在しています。そうした場所をどのようにつないでいくかが、今後の回遊づくりのポイントになると考えています。
立川商工会議所 小野さん:
これまでの施策ではイベント開催や集客に重点を置いていました。しかし今回は、データで現状を把握し、情報を届け、さらに移動手段まで用意するなど、これまでとは違うアプローチを取ることができました。実際に回遊を生み出すことができたと感じています。
またデータがあることで、行政、事業者、そして街の関係者が同じ状況を共有しながら議論することができます。それが、このプロジェクトの大きな価値だと感じています。
回遊を生む仕組みへ。次年度のチャレンジ
立川商工会議所 小野さん:
これまでの取り組みを通じてだいぶ見えてきたことがあります。データを見ながら検証していくことで、回遊を生み出すための手がかりが少しずつ見えてきました。
やはり、きっかけをつくって「ここに行ってみよう」と少し背中を押すような仕掛けをすると、人は回っていくのではないかという感覚があります。そうした意識づけをどう作っていくかが大事だと感じています。
来年度、昭和記念公園で3万人規模のイベントが予定されています。イベント来訪者に対して街の回遊をどう生み出すか。モビリティを拡充したうえで、イベントに興味を持ちそうな方への情報配信や、たとえばイベントと関連性の高い店舗とのコラボレーションによるモデルルート組成というアイディアもあるかもしれません。
またこうした取り組みを持続的なものにしていくためには、スポンサーにとっての効果をデータで示すことも重要になります。地域の店舗や企業も参画し、地域の中にお金が循環する仕組みを作ることができれば、自立した取り組みとして発展していく可能性があります。
BRJ 小野寺さん:
マイクロモビリティは、街の中にある魅力的な場所を知ってもらうための一つのツールだと考えています。利用台数を増やすこと自体が目的ではなく、立川市が抱える回遊の課題を解決するための移動手段として役立ててほしいと思っています。
そのためには、利用者の利便性を高めることが大前提になります。たとえば駅前などの交通結節点に大型ポートを設置し、常に車両が利用できる状態をつくることも重要です。街の中を自由に巡る移動環境が整えば、ゆっくりと街を巡るロングライドのような使い方も広がっていくと考えています。
また私たちは、単に次世代モビリティを提供する事業者ではなく、地域の移動を設計する「地域インテグレータ」の役割を担いたいと考えています。既存の公共交通だけではカバーしきれないエリアの移動を、マイクロモビリティや自動運転バスなど複数の手段を組み合わせて補完していく。そうしたマルチモーダルな移動のあり方を、地域と一緒につくっていきたいですね。
unerry 小坂:
今後は人流データだけでなく、消費データも組み合わせた分析にもチャレンジしていきたいですね。「推計観光消費額」のような形で、地域の店舗や施設にどれくらいの経済効果が生まれているのかを可視化できれば、自治体だけでなく、商業施設や観光事業者など、より多くのプレイヤーが参加しやすくなると思います。
モビリティ導入が移動のきっかけを生み、データがその変化を捉える。その結果を街の施策へと活かしていく。こうした循環が、このプロジェクトの面白さだと感じています。
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