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2022.08.09

加藤丈峰(ともたか)

【日経ムック掲載】リアル社会を網羅的に可視化、解析。 社会課題解決に向け、新たな人流を創る

【日経ムック掲載】リアル社会を網羅的に可視化、解析。 社会課題解決に向け、新たな人流を創る
コロナ禍を契機に注目を集めた街づくりや地域交通における人流活用は、この1年で特に大きく増えております。本記事では2021年3月発行、「行政のデジタル化」の全体像を明らかにした「日経ムック」より、街のリアルな状況を捉えるunerryの取り組みについてご紹介します。掲載内容及びご担当者様の所属は掲載当時のものです。また、2022年8月現在、unerryが蓄積する人流ビッグデータは月間300億件超となりました。

日経MOOK「日経ムック まるわかり!行政のデジタル化」(日本経済新聞出版 編)より転載
※当記事は、日本経済新聞出版の許諾を得て転載しています。
掲載日:2021年3月22日

月間100億件超のデータでリアル社会を捉える

人の移動など、リアルな行動データを活用する取り組みが進んでいる。なかでも注目を集めているのが、日本最大級のデータ規模を誇るunerry(ウネリー)のリアル行動ビッグデータだ。同社の強みや、活用例を紹介する。

人の移動データなどをリアルタイムに蓄積・AI解析し、街づくりや社会課題解決をサポートするウネリー。同社のリアル行動ビッグデータの特徴は、”網羅性”と”多様なAI解析”にある。スマートフォンの位置情報をベースに,屋外の行動はGPSで、地下や屋内の行動は全国約210万個(2021年1月現在)のビーコンで精緻に捉える。また特許技術を搭載した専用IoT機器を設置すると、訪問人数や混雑状況がリアルタイムにわかる。これらを組み合わせて収集した月間100億件超のデータで、リアル社会を捉える仕組みだ。

同社のリアル行動データは個人を識別できないよう統計処理したうえで、AIで徹底的にデータを解釈している。例えばある場所を解析すると、訪問する人々の年代構成、性別、訪問頻度の分布、車移動・徒歩移動の割合や、併せてどこに立ち寄る可能性が高いか、どのような業態のお店や場所を好む傾向が強いかなどがわかる。

同社のCOOを務める鈴木茂二郎氏は 「エリアの社会課題を本気で解決するには、まず実態理解の解像度を上げる必要があります。国勢調査やアンケート、年1回の交通調査などで現状を把握している事業者・団体は未だ多い一方、そのやり方ではデータが部分的だったり、リアルタイム性に欠けたりしてしまいます。いかに網羅的にリアル社会を測定可能にし、問題発生時に対応できるかは、これからのレジリエンス(強靭)な街づくりにも欠かせません。」 と話す。

unerry取締役COO鈴木茂二郎氏

同社のデータを用いると、具体的にどのようなことができるのか。観光地の魅力向上と観光客による渋滞解消の両立を目指す自治体との取り組みが好例だ。ある地域の観光客を来訪手段別に解析したところ、実は公共交通機関よりも、自動車で来る人の方が観光地に滞在する時間が短く、回遊性が低いことがわかった。

観光地内の名所巡りで渋滞が発生していると考えられていたが、実態としては、車利用者は同日に他の観光地も訪れており、観光収入への寄与度が低い行動パターンが散見された。 「こうした実態を把握できれば、渋滞発生源となりやすい場所の駐車場料金の値上げや、多くの観光客に電車で来て満足度を得てもらえるようルートバスの増便に力を入れるなど、具体的な解決策を考えられます。生のデータに基づいて自治体や事業者とアイデアを出し合い、実施してその効果をまた評価できる点は、当社ならではの強みです」(鈴木氏)。 環境境に配慮した街づくりという観点でも、注目の取り組みといえるだろう。

リアルとデジタルの融合が社会課題解決の端緒に

行動データの広い活用に向け、現在、東京都のワーキンググループがルールやプラットフォームの枠組み作りを進めており、同社も業界のフロントランナーとして議論に加わっている。さらに、国土交通省が主導する3 Dマッププロジェクトにも連携企業とともに参加。行動データ可視化とユースケース作りに取り組んでいる。 「リアル社会のデータ化は、今後スマートシティが広がっていく上で欠かせません。市民が行動データを当たり前に活用できる状況が、遠くない未来に実現するでしょう。例えば、訪問予定の場所が混んでいるとわかり、同時に自分の嗜好性に合った他の場所のレコメンドなどを受け行動変容が起きれば、自然と人流が分散されます。結果、混雑回避と回遊促進が起こると共に、おでかけ自体の満足度が上がる、という具合です」(鈴木氏)。

同社のデータは各種スマートフォンアプリやSNS、IoTサイネージなどとも連携可能で、一部の企業・自治体とは行動レコメンドの取り組みを始めている。リアルとデジタルのデータ融合が、社会課題解決の端緒となる未来はもう目の前だ。

オフィス街の人流をダッシュボードで見える化。コロナ禍でも街の機能を適切に維持。

unerryの行動データを活用し、街の人流をリアルタイムで把握することで、ビジネスにおける価値創出に成功している例がある。東京都の大手町・丸の内・有楽町エリアにおける流動人口をダッシュボードで見える化した、三菱地所の取り組みだ。2020年の年明け以降、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が増え、オフィス街に訪れる人々の行動パターンは大きく変化した。

三菱地所の小松原綾氏は、 「街としての機能を適切に維持するためには流動人口の定量的な把握が重要と考え、ダッシュボードの導入に至りました」 と説明する。

同社は丸の内エリアに約700個のビーコンを配置。これにより、日々のエリア流動人口や男女の内訳、ビル別の訪問者数の傾向などを確認できるようになった。これらの情報は、2020年1月時点を基準として、各週の傾向を割合として確認している。 「これまで体感値でしかわからなかった人流を、数値で可視化できたのは大きな進歩です。データは社内で共有しており、イベント開催時期の判断や営業にも活用しています」(小松原氏)。

当初は準備していなかったものの、社内の要望を受けて後から追加したデータ項目もある。同一ビル内での、飲食フロアとオフィスフロアの分類だ。コロナ禍でオフィス街に訪れる人は減ったものの、すべての飲食店を閉めてしまえば”ランチ難民”が発生しかねない。そこでフロア別に細かく人口を調査し、最適なテナント運営に役立てた。

同社の奥山博之氏は、 「追加で調べたいデータが出てきた際など、unerry様には柔軟にご対応いただき大変助かりました。データの量や質も十分に確保されており、費用対効果の高いサービスであると実感しています」 と話す。現在、ダッシュボードの最小単位はビルのフロアごとだが、店内にIoTセンサーを設置すれば、売り場や通路ごとの人流まで把握できるようになる。 「将来的にはテナント様にもデータをご活用いただき、個々の店舗運営に役立ててもらえる環境を作りたいと考えています」(奥山氏)

三菱地所エリアマネジメント企画部オープンイノベーション推進室小松原綾氏(写真左)、奥山博之氏(写真右)

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加藤丈峰(ともたか)

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unerryの自社マーケティングをしています。趣味はボルダリング。休日は都内のボルダリングジムを開拓しています。

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