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2023.10.04

うねりの泉編集部

都市OSとは?導入事例、スマートシティ実現に向けた課題と解決策を解説

都市OSとは?導入事例、スマートシティ実現に向けた課題と解決策を解説

都市OSとは、あらゆるデータを集積・分析し、自治体や企業が連携する基盤です。地域課題の解決や市民へのサービス向上のために、各自治体で都市OSの導入が進んでいます。この記事では、主に自治体や企業でスマートシティに関する仕事をされている方に向け、都市OSについて解説します。導入の課題や活用事例を解説しています。ぜひ、参考にしてください。

OSとは

「OS」とは、「Operating System(オペレーティングシステム)」の略称で、パソコンを操作したり、アプリを使用する際の土台となる「基本ソフトウェア」です。

都市OSとは

パソコン内部のOSとは異なり、都市OSは都市レベルのデータ連携基盤を作ります。

■概要

都市OSとは、都市サービスおよび都市間の連携を実現するためのシステム的な共通の土台です。エネルギー、物流、交通、医療、金融、通信、教育など、都市が抱えるあらゆる種類の膨大なデータを1ヵ所で集積・分析するデータプラットフォームの役目をもち、さまざまな事業者や地域が提供するサービス・機能を自由に組み合わせ活用できるようになります。またスマートシティ構想を支える重要な要素でもあります。


出典:『スマートシティ リファレンスアーキテクチャのつかい方 導入ガイドブック』 P11

スマートシティに関する解説記事はこちら↓

■都市OSが実現すること

共通のシステム的な土台である都市OSの活用により、異なる分野や他自治体が提供するサービスの横展開が可能となります。

従来は、自治体や分野ごと、単独での利用が想定された独自のシステムが採用されていたため、それぞれの規格はバラバラで、優れたサービス(システム)があっても他自治体への横展開や応用、複数分野をまたぐデータの共有は困難でした。

しかし、都市OSにおいては規格の統一およびAPI(Application Programming Interface)の公開により、スマートシティサービスとデータにおける「1 対 1」の関係を「N 対 N」へと変え、シームレスな相互利活用を実現できます。横展開やデータ共有が可能となったことで各地域がゼロから作り上げる必要がなくなり、開発スピードの向上、コストダウン、サービスの質向上が期待されます。


出典:『スマートシティリファレンスアーキテクチャ』P17

スマートシティ実現に向けた3つの課題

スマートシティ実現にあたり、日本では3つのシステム面での課題に直面しています。その解決策として都市OSの活用が期待されますが、改めてその課題について整理します。ここでは、内閣府が各地域でスマートシティに取り組む方向けにまとめた「スマートシティリファレンスアーキテクチャ(7.1.1)」を参考にしています。

①サービスの再利用や横展開が困難

従来は各自治体や企業といった組織、および分野ごとに個別特化したシステムが採用されてきました。これでは、よいサービスがあっても、他地域へのサービスの再利用や横展開といった応用が難しい状況です。

②分野を横断したデータ利活用が困難

上記同様、データにおいても組織や分野ごとに独立している状況です。このため、分野を横断するデータ活用や、新サービスの構築は容易ではありません。

③拡張性の低さ

継続的かつ容易にはサービスを進化させられない、システムの拡張性の低さも課題にあげられます。従来の個別特化しているシステムでは、機能拡張によるコストや労力が膨大にかかります。

都市OSによる3つの解決策(要件)

前項で説明した①サービスの再利用や横展開が困難 ②分野を横断したデータ利活用が困難 ③拡張性の低さ といった課題を解決するために、都市OSが対応すべき3つの要件があります。引き続き「スマートシティリファレンスアーキテクチャ(7.1.1)」を参考とします。

①相互運用(つながる)

サービスの再利用や横展開を可能にするには、相互につながりやすくする仕組みが必要です。
相互運用とは、都市OS間でサービスの再利用や横展開を可能にし、相互につながりやすくすること。共通の機能や標準的なインタフェースを備え、かつ外部に公開できる仕組みを整えることで、地域の枠を超えた自治体間や企業とのスムーズな連携が可能となります。

②データ流通(ながれる)

分野を横断したデータ利活用を促進するためには、地域内外のデータを仲介して連携させる仕組みが欠かせません。データ流通とは、さまざまな分野や組織の壁を越えデータをひとつの共有された論理的なデータのように見せ、地域内外でデータがながれやすくすること。都市OSには異種データ(地理空間データ、パーソナルデータ、各種統計データ、リアルタイムな動的データといった都市OS内外の多種多様なデータ)を仲介する仕組みが必要です。

③拡張容易(つづけられる)

拡張性の低さを改善するために、機能拡張や更新を容易にする仕組みも求められます。拡張容易とは、地域が解決する課題や目指すべき将来像、および新たなスマートシティサービスの追加に合わせて、都市OSの機能拡張や更新を容易にすること。各機能をブロック化し、各ブロックを組み合わせるシステム構築手法(ビルディングブロック方式)により、必要な機能のみの拡張や更新が可能な仕組みが必要です。

出典:『スマートシティリファレンスアーキテクチャ』P134

都市OS導入にあたっての課題

自治体の多くは実証段階にあり、本格的な導入に向けて取り組みを進めている段階です。ここでは、都市OS導入の主な課題を解説します。

■人と資金の調達が難しい

とくに中小規模の自治体にとっては、データ連携・活用にむけた横断的な企画、調整など施策を実行可能な人材の確保や、都市OSの構築・運用費用を捻出することが難点です。複数自治体による共同利用や、導入目的に合わせた段階的な拡張など長期的な視点に立った取り組みが選択肢の一つになりうるでしょう。

またマネタイズの難しい都市OSにおいて、その費用負担を税金で賄うべきなのか否かの議論が必要という指摘もされています。とくに導入初期段階においては、都市OS活用によるスマートシティサービスの範囲は限定的で、高い公共性があるとは言えないケースもあります。補助金を活用しながらも、実証実験段階で留まってしまったり、数年で頓挫してしまう原因には維持運用費用を継続的に税金で賄うことへの住民合意の難しさが指摘されています。

参考:
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/smartcity/vol72.html

■住民の合意を得る必要がある

新たなサービスの導入にあたっては、データ利用の合意を住民から得る必要があります。プライバシーや情報活用の観点から丁寧な説明を行うことが重要であり、データ利用の合意状況を明示することも求められます。合意を簡易に確認・変更が可能な仕組みとともに、安全な情報利活用を保証するセキュリティ対策やプライバシー/データ保護技術が必要です。

参考:
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2021/10/smartcity-sdgs-02.html#:~:text=2%EF%BC%8E,%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E3%82%92%E6%8A%B1%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

都市OSの活用事例

都市OSを導入する自治体は年々増加し、2021年度までに国内累計46地域で実装・運営中です。また国は2025年度までに都市OSの導入を100地域に増やすことを目標としています。
ここでは既に取組みを進めている5つのエリアをご紹介します。

出典:内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 『スマートシティ推進施策について』2022年4月

■会津若松市

福島県会津若松市では、都市OSに連携したスマートシティ構想「スマートシティ会津若松」を推進しています。会津若松市は2015年、アクセンチュアが開発した日本初の都市OS「DCP(デジタルコミュニケーションプラットフォーム)」を導入。官民含めた様々なサービスが接続され、2023年4月時点で、22サービス/23種データが接続しています。

市民ポータルサイトの「会津若松+(プラス)」も都市OS上で実現されています。「会津若松+」は、利用者の同意(オプトイン)のもとで、データを連携する機能を備えています。各利用者の登録情報などに合わせてパーソナライズ(個人ごとに最適化)した情報をポータル上で表示。市民一人ひとりに必要な情報を提供することが可能です。行政情報に限らず、民間企業の情報も掲載・提供されており、地域のニュースから学校行事、除雪車の位置情報に至るまで利用者は一つのポータル上で自分の生活に身近な地域情報を入手可能です。

■高松市

香川県高松市では誰もが、どこからでもデジタル技術の利便性を享受できることを目指す「スマートシティたかまつ」の推進にあたり、IoT共通プラットフォーム(「都市OS」)の構築を行いました。ここでは日本で初めて、EUの次世代インターネット官民連携プログラムで開発・実装された基盤ソフトウェア、「FIWARE(ファイウェア)」が活用されました。主に防災分野や観光分野などの課題解決に役立てるため、関連する複数領域のデータ収集や分析を実施。たとえば防災分野では、各所に設置したセンサーから水位・潮位の情報、雨量などのデータを収集し、河川も水位や避難所の開設状況などの情報を「高松市ダッシュボード」でリアルタイムに可視化しました。

■柏市

「柏の葉スマートシティ」を推進する千葉県柏の葉地区(柏市、柏の葉キャンパス駅から柏たなか駅一帯にかけての約13平方キロのエリア)では、「公・民・学の連携」+「データの活用」を軸とした様々なプロジェクトが、分野横断で展開されています。

また2020年11月より稼働した「柏の葉データプラットフォーム(都市OS)」は、データ連携・利活用の場を、あらゆる人々や事業者、機関に提供するプラットフォームです。日々更新される街や個人のデータを連携し、企業や各種機関が活用可能にすることで、新しい価値やサービスの創出を図ります。利用者は個人の意志に基づいたパーソナルデータの連携が可能です。自分のアカウントをデータ連携基盤「Dot to Dot」に紐付けすると、パーソナルデータをサービスに連携できるようになり、内容確認や同意の有効期限の変更、一度同意した連携を解除することができます。

公・民・学の連携組織である「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」を母体とする一般社団法人UDCKタウンマネジメントがハブとなり、「柏の葉データプラットフォーム」に参画する各社とのコミュニケーションを図り、円滑なデータ連携を推進しています。

■浜松市

静岡県浜松市では、「デジタル・スマートシティ浜松」の推進を支えるデータ連携基盤モデルとして「都市OS」を構築しています。また浜松市では、一般社団法人コード・フォー・ジャパンと連携し、浜松市データ連携基盤活用モデル事例創出事業「Hamamatsu ORI-Project」を始動。データ連携基盤を活用した新たなアプリケーションやサービスの創出に向けた案件を全国から募集するなど、官民協働のエコシステムづくりを進めています。なお、同基盤のインフラにはクラウド(AWS)が採用されています。サーバーレス環境はスモールスタートで取り組みを開始でき、利用の拡大に応じてスケールすることが可能など、コスト低減やリスク回避の観点でメリットがあります。

※「Hamamatsu ORI-Project」は、「Hamamatsu Open Regional Innovation Project」の略称です。ORIと織(おり)をかけ、遠州織物をはじめとした繊維の街・浜松で、糸を紡ぐように官民が連携し新たなイノベーションを起こすことを目指しています。

■東京都 竹芝地区

東京都 竹芝地区では、2019年7月から東急不動産とソフトバンクが共創で最先端のテクノロジーを街全体で活用するスマートシティのモデルケースの構築に取り組んでいます。

2社が共同で推進する「Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)」では、竹芝地区において収集した人流データや訪問者の属性データ、道路状況、交通状況、水位などのデータを、さまざまな事業者がリアルタイムで活用できる「データ流通プラットフォーム(都市OS)」が導入されています。

都市OSでサイロ化された街の防災情報を一つに統合し、街の状況をリアルタイムに把握して情報発信できる防災サービスを開発するなど、先端技術を活用したサービスなどを竹芝地区に実装することで、回遊性の向上や混雑の緩和、防災の強化などを実現し、竹芝やその周辺地区の課題解決に取り組んでいます。

まとめ

都市OSとは、交通機関、医療、教育といった分野をまたがったあらゆるデータを集積・分析し、自治体や企業が横断的に活用するためのプラットフォームです。地域課題解決や、住民へのサービス向上に役立ちます。都市OS導入にあたっては、人と資金の調達や住民の合意を得る必要もあるため、長期的な視点に立った導入検討が求められます。

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