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2023.08.01

うねりの泉編集部

スマートシティとは?データ活用が鍵!?国内事例や活用技術を解説

スマートシティとは?データ活用が鍵!?国内事例や活用技術を解説

地球規模で進行する都市化を背景に、エネルギー不足や環境汚染のリスクが高まる状況下、デジタル技術を都市開発に活用する「スマートシティ構想」に注目が集まっています。本記事では、スマートシティとは何か?その定義や種類をご紹介した上で、用いられる技術やスマートシティ実現に必要不可欠なデータ活用を進める国内事例をご紹介します。

スマートシティとは

スマートシティの定義について、まずはいくつかの定義をご紹介しましょう。

■内閣府のスマートシティの定義
スマートシティは、ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場と定義されています。
※参考:スマートシティ – Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府

■国土交通省のスマートシティの定義
都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」を『スマートシティ』と定義し、その実現に向けた取り組みを進めています。
出典:国土交通省『スマートシティに関する取り組み』

■野村総合研究所(NRI)のスマートシティの定義
都市内に張り巡らせたセンサー・カメラ、スマートフォン等を通じて環境データ、設備稼働データ・消費者属性・行動データ等の様々なデータを収集・統合してAIで分析し、更に必要に応じて設備・機器などを遠隔制御することで、都市インフラ・施設・運営業務の最適化、企業や生活者の利便性・快適性向上を目指すもの
出典:NRI https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/sa/smart_city

表現はそれぞれ異なるものの、スマートシティとは
「ICT・IoT・AI・ビッグデータなどの新技術を活用することで都市や地域が抱えるさまざまな課題を解決し、生活者の利便性や経済発展との両立を目指す、持続可能な都市(地域)」と言えそうです。

スマートシティの種類

さてスマートシティには、ゼロからつくる方法と既存の街を活用する方法があります。ここでは、スマートシティの種類を解説します。

■グリーンフィールド型

グリーンフィールド型とは、埋立地や工場跡地など、整備されていない未開発の更地からスマートシティをつくる構想です。未開拓の土地や空き地が緑色を連想させるため、グリーンフィールドと呼ばれています。

グリーンフィールド型のスマートシティには既存住民がいないため、比較的大胆で自由な街づくりが可能です。スマートシティのコンセプトやサービス内容に賛同した住民が新たに移住するためデータ提供・活用における同意・許諾を得やすいのはメリットですね。

福岡市東区の九州大学箱崎キャンパス跡地で進められている「FUKUOKA Smart EAST」や大阪市のうめきた2期地区での取り組みが知られています

■ブラウンフィールド型

ブラウンフィールド型とは、デジタル技術を活用して、既存の街の課題を解決するスマートシティ構想です。都市のスマート化を進める各プロジェクトは、既存住民との合意のもとに実施されており、合意形成に時間がかかる一方、意見を聞きながら推進できるというメリットもあります。

ブラウンフィールド型は、世界においてもスマートシティ構想の主流です。国内では横浜市が取り組む「横浜スマートシティプロジェクト」や福島県 会津若松市での実践が例にあげられます。

スマートシティが注目される背景

2050年には世界の人口は97億人に増加すると予想され、都市化率も70%近くに達すると見られています。人口一極集中によるエネルギー不足や環境汚染、交通渋滞、感染症、自然災害などのリスクの深刻化が懸念される中、課題解決の方法の一つとしてスマートシティ化に注目が集まっています。

近年急速な進化を遂げているIoT、ビッグデータ、AI技術などを有効活用するスマートシティ化が実現すれば、スマートグリットによるエネルギー管理や、交通機関の運行最適化、災害予想を踏まえたインフラ整備など、持続可能な都市創造に向けた多様な取り組みが実現されると期待されます。

参考:
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/social_development/population/

スマートシティで用いられている技術

スマートシティ構想は、状態や事象を捉えるデータを集積し、共有し、解析・分析し、課題を解決するため、以下をはじめ数多くの技術連携により成り立っています。

■センシング技術

専用センサーを活用し、温度や湿度、電力、明るさ、音量、耐久性、加速度や人流など、さまざまな状態をデータ化するための技術です。IoT化が進み、クルマや自動販売機など街のあらゆるモノがセンサーの役割を担うことで、より正確に街の様子を捉えることができると予想されます。

■通信技術

モノのインターネット=IoTであるようにインターネット接続はスマートシティに向けては不可欠なものです。たとえばスマートグリッド(次世代送電網)構想においてはスマートメーターの存在が欠かせません。スマートメーターがネットワークに接続されていることで、家庭や企業における電力消費状況を供給側が遠隔把握でき、電力の安定供給や需要予測、電力の地産地消の仕組みにも備えることが可能です。現在は、高速大容量、低遅延、多数同時接続の特徴をもつ5Gに大きな期待がされています。

■データ活用技術

ビッグデータを活用するためには、データを必要な形に整え、有用なデータを抽出し、解析可能な状態にすることが肝要です。ここではAI活用が重要な役割をはたすとともに、専門家であるデータサイエンティストの必要性は増しています。

その他、アプリケーション開発や現在進行形で開発が進められているドローンやロボティクス、自動運転などの自動化技術などもスマートシティを支える重要基盤としての需要が高まっているようです。

スマートシティ実現での期待

スマートシティは都市問題の解決と生活の利便性向上の両面で期待がされています。

■都市課題の解決

スマートシティは、ICT技術やビックデータなどを用いて、都市の抱える課題を解決できます。たとえば、エネルギーの効率的な活用や交通渋滞の緩和などを実現した都市づくりです。また、企業や自治体、住民からデータを収集して仮想空間を解析することで、現実の空間を最適化するシステムも構築できます。

■生活の質の向上

スマートシティは、都市に住む人のニーズに合わせた、快適な生活スタイルを提供できます。たとえば、交通の運行状況やGPSやIoTセンサー、カメラなどによる人流の可視化技術を活かせば、新型コロナウイルスのような感染症拡大を防ぐ仕組みの構築も可能です。

都市によってニーズや課題は異なりますが、ICT技術を正しく活用することで人々の生活の質は、向上します。自治体や企業がスマートシティ実現に向けて柔軟に協力しあうことが重要です。

スマートシティ実現に向けた課題点

スマートシティが実現されれば、住民1人ひとりにも都市全体においても大きな変化が生じる可能性があります。ここでは、スマートシティ実現に向けた課題点を解説します。

■プライバシーに対する懸念

スマートシティは住民や都市からデータを収集するため、同時にプライバシーに関する配慮が求められます。カメラやセンサーなどはデータ収集に役立ちますが、生活の質の向上のためにはELSI(法律や倫理、あるいはその技術が社会に受け入れられるかなどの課題)の観点も大切です。スマート化する際は、利便性ばかりを追うのではなく、生活者1人ひとりのプライバシーにも配慮しなければなりません。

■都市機能が停止する可能性

スマートシティはICT技術に依存するため、サイバー攻撃やシステム障害、電力不足などによる影響が大きくなります。システムの構造は、都市の大きさに比例して複雑になるため、復旧に時間がかかることを想定し、リスクを想定した都市を構築する必要があります。

スマートシティの取り組み例

ここでは、国内におけるスマートシティ構想のプロジェクト事例について記載します。

■大丸有スマートシティプロジェクト:「可視化」するデータ基盤活用

東京駅と皇居に挟まれるエリアである、大手町、丸の内、有楽町を舞台にした「大丸有スマートシティプロジェクト」は、公民が連携して『まちづくりガイドライン』を策定。これに掲げる将来像、まちづくりの目標を達成するために進めている、ビジョンオリエンテッドなスマートシティの実現を目指しています。

また、都市のリアルタイムデータを収集することで、従来は経験則等で判断してきた部分も含めて、データに基づいた意思決定を行う「エリアマネジメントのデジタルトランスフォーメーション(DX)モデル」の構築を進めています。

さらに都市のデータを活用するための基盤として「大丸有版都市OS」、「都市の2D/3Dモデル」、可視化のための「ダッシュボード」、都市のリ・デザイン等を検討する「シミュレーター」、蓄積した都市データを新たなサービス創出につなげるデータの司書機能「データライブラリ」の実装を進めていくと発表。データ活用は「大丸有スマートシティプロジェクト」の根幹となっています。

■スマートシティ会津若松:22のサービスに接続する「都市OS」

「スマートシティ会津若松」は東日本大震災後、会津若松市、会津大学、アクセンチュアの3者協定からスタートした産官学連携のプロジェクトです。

たとえば以下のような様々な分野でICTをツールとして活用しています。

【行政】知りたいことに応じて情報が届く「会津若松プラス」
【観光】人それぞれに合った観光ルートを提案する「VISIT AIZU」
【地域活性化】中山間地域生活支援システム「みなとチャンネル」
【農林水産業】農業の生産性・効率性を向上させる「養液土耕システム」

また、会津若松市においては、スマートシティのためのデータ連携基盤「都市のオペレーティングシステム(都市OS)」を活用し、分野を超えてデータを連携させる仕組みを整えています。「都市OS」にはヘルスケア、行政、観光、防災、決済、食・農の6分野22のスマートシティサービスと、災害時安否情報や購買情報といったデータアセット、市の基幹系システムなどの外部システムが接続されています(2023年3月時点)。

さらに取り組みの一環として、首都圏などのICT関連企業が機能移転できる受け皿としてのオフィス環境や交流空間を備える「スマートシティAiCT」が2019年4月にオープンしました。「スマートシティAiCT」は、会津ICTの略であり、AiCTの”A”には、AIZU、AI、Advance(前進、進出)の意味が込められています。

■柏の葉スマートシティ実行計画:民間+公共のデータプラットフォーム

柏市では、2005年のつくばエクスプレス線の開業を契機とし、柏の葉(柏の葉キャンパス駅から柏たなか駅一帯にかけてのエリア、約13平方キロのエリア)での「課題解決型のまちづくり」が進められてきました。

柏市・三井不動産株式会社・柏の葉アーバンデザインセンター(東京大学、千葉大学、千葉県、柏市、民間企業などが連携し、2006年に設立された組織、UDCK)が幹事を務める「柏の葉スマートシティコンソーシアム」は、スマートシティの実現に向け「柏の葉スマートシティ実行計画」を2019年に策定。

この実行計画では、「公・民・学連携」+「データ駆動」による地域運営を掲げており、戦略の一つとしても民間+公共のデータプラットフォーム構築が構想されています。

分野としては「モビリティ、エネルギー、パブリックスペース、ウェルネス」の4テーマを設定。人・モノ・情報が集まりやすい柏の葉エリアの特徴を活かした、「駅を中心とするスマートコンパクトシティの推進」を掲げています。

また、「柏の葉スマートシティ」ではスタートアップ企業のビジネスを支援する「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」が用意されています。オフィス、事業成長プログラム、開発/実証施設など、新産業創造を目的にさまざまな場と機会を提供しています。

まとめ

スマートシティはデジタル技術を活用することで都市機能をアップデートし、地域課題の解決や生活向上につなげる構想です。近年注目が高まり、国内でもさまざまなスマートシティ構想事例が誕生しています。

スマートシティ実現に向けては、データ基盤とそれを支える技術が重要な役割を果たします。公共データだけでなく、民間企業が持つデータアセットも安全かつ有効に活用するため、官民一体となってスマート化を実施することが成功の鍵と言えるのではないでしょうか?

unerryは、月間400億件超の大規模人流ビッグデータをAIで解析可能です。エリア内の人の流れを可視化、さらに混雑状況や移動手段の判定など、スマートシティの取り組みを検討する際に必要なデータをご提供可能です。ぜひご活用ください。

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