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2023.02.01

うねりの泉編集部

人流とは?データの分野別の活用事例や取得方法をかんたん解説!

人流とは?データの分野別の活用事例や取得方法をかんたん解説!

2021新語・流行語大賞トップ10にも選出された「人流」。しかし、人流データは感染症対策だけでなく、マーケティングやまちづくりの分野で広く活用されています。

この記事では、人流データの活用例を中心にご紹介するとともに、人流データの概要や人流データ分析が注目を集めている理由も徹底解説いたします。

人流データは既に多くの企業のビジネス成長や公共サービスの充実に貢献しています。本記事がデータ活用検討のためのヒントになれば幸いです。

人流データとは何か?

人流データとは、文字通り「人」が移動する「流れ」を表したデータです。

人々が「いつ」「どこ」にいたのか、というシンプルな位置情報(点)を集積することにより、「どこからどこへ」移動したのか(線)という人の流れを把握します。

人流データを分析することで、

・特定のエリアや時間にどれだけ多くの人が滞留しているのか(=密度)
・時系列での変化
・移動手段(徒歩、電車、自転車、自動車など)の判別 

など、さまざまなことがわかります。

人流データ一例:駅利用者の同日行動をアニメーションで表現(2020.10)

人流データ分析とは何か?

人流データを分析し、群衆の動きの全体感を把握することで、まちづくりからマーケティングまで幅広い活用が可能です。

人流データ(位置情報)の収集方法はざまざまですが、多くはスマートフォンの位置情報を活用しています。近年、スマートフォンの普及によってデータ量が急増し、特定のエリアや時間でも分析可能なビッグデータとなったことで人流データ分析は活用幅を広げ、その精度を高めています

現在は、店舗への来店分析、街への来街分析、県境を超えるような観光移動分析など、粒度の異なるさまざまな分析が可能であるほか、人流データ分析は国勢調査などと比較して、時間のラグなくタイムリーに実施可能であることも特徴です。

新型コロナウイルス感染が社会を大きく変えた2020年〜2021年は、毎日のようにメディア各社が「○○の人出は先週に比べて○○%減っています」と、主要駅や繁華街での人流推移を報道していましたが、それらも人流データを保有する企業からの提供データや分析レポートが基になっています。

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人流データ分析が注目を集めている理由とは

現時点では、新型コロナの影響が最も大きな要因と言えそうですが、それ以前にも市場は拡大していました。人流データを活用したデータドリブンな意思決定が可能となる、その背景について解説します。

※デロイト トーマツ ミック経済研究所が6月27日に発刊した「位置情報ソリューション市場の現状と展望2022年度版」では2020年度~2022年度までの市場規模を算出。位置情報ソリューション全体(「屋外測位ソリューション」「屋内測位ソリューション」「分析プラットフォームツール」)の市場規模について、2025年度には売上高が1000億円を超えると予測。2021年度の分析プラットフォームツール市場は前年比115.9%の190億円となった。

①スマートフォンが世界全体で普及した

2019年時点で個人の「スマートフォン」保有者の割合が67.6%(※1)。現在までにさらに拡大しているとすると、2023年時点では小さいお子様を除けば、日本国内でも1人1台に近い割合とも言えそうです。

後述する「人流データを収集する4つの方法とは」で記載する方法がいずれもスマートフォンを活用(※2)しているように、広く人流データを活用する場面の多くでは「スマートフォンの位置情報」がベースになっています。

スマートフォン普及率と、そして位置情報を活用した便利なアプリも増えたことで広い範囲かつ密度の濃い人流データが集積されるようになりました。

※1 総務省 令和2年版 「情報通信白書」情報通信機器の保有状況
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252110.html

※2 目視によるカウントや、カメラの画像解析、カーナビなど車両移動に関わる「プローブデータ」などスマートフォン以外の活用もありますが、本記事では広く人の流れを捉えるビッグデータを対象に解説します。

②AIが発達した

スマートフォン普及により、人流データは規模化がされました。

しかし、膨大なビッグデータを現実的な時間で効率よく分析するためには高性能なPCと、そしてAI技術の発達が必要でした。特にビジネス領域では、いかにリアルタイムに近い時間軸で分析できるかが重要な要素です。AI技術の進歩によって、大幅に時間が短縮されたことは人流データ活用にとっての大きなポイントでした。

③データの保管コストが安くなった

人流データの規模化に伴い、新たに必要になったのは安価に安全に格納できるサーバー環境です。

あらゆる分野でビッグデータ活用が加速する中、 Google Cloud や AWS をはじめとするクラウドサーバーが発展を遂げ、効率化手法も進化しています。セキュリティを担保しながら、効率的にデータを格納できるサーバー環境が整ったことにより、データの保管コストが下がり活用が進みました。

人流データを収集する4つの方法とは

スマートフォンを活用した人流データを収集する主な方法として、「GPSデータ」「Wi-Fiアクセスポイント」「携帯電話の基地局データ」「ビーコン」の4つをご紹介します。

①GPSデータ

GPSデータは、人工衛星からの電波をスマートフォンが受信して位置情報を取得する仕組みによるものです。緯度経度単位での「点」の情報取得ができるため、広範囲かつ詳細な位置情報を集める際に有効な手段です。また、滞在に加えて移動の分析にも強く、移動に伴う一連の流れを把握できます。一方、地下など人工衛星からの電波が届かない場所や、ビルのフロアなど立体的な「階層」を把握することは、技術的にまだ苦手としています。

なお、スマートフォンのアプリケーション経由で情報取得する際にはアプリユーザーからの情報提供・利用許諾が必要です。対象アプリケーションにおける位置情報の取得頻度や、利用者数、属性の偏りはデータの統計的な精度に深く関わりますので、偏りなく、かつ連続性を得られるビッグデータとなっているかも考慮する必要があります。

②Wi-Fiアクセスポイント

Wi-Fiは、Wi-Fi機能を使用しているスマートフォンが「Wi-Fi電波を送受信している機器」(=アクセスポイント)と交信した履歴をもとに位置情報を推測しています。精度はアクセスポイント単位。電波の強弱を調整することができない弱点はありますが、GPSが苦手な屋内や地下鉄にいる時などのデータを捉えるのも得意です。機器設置には電源と導入コストは必要ですが、駅や空港など、街中にアクセスポイントが増えてきています。なお、あらかじめ、Wi-Fiアクセスポイントが「どこにあるか」の場所情報を把握しておく必要があります。

③携帯電話の基地局データ

安定的に通信するために、定期的にスマートフォンが基地局と交信している履歴情報をもとに、人の移動を把握する仕組みです。基地局の設置間隔によるため、250m、500mメッシュなどやや荒いデータ精度となります。しかし、各キャリアの利用者が対象であるため母集団が大きく、人数推計は高い精度が期待できます。また、スマートフォンのGPS機能がオフでも、情報を取得できる点はメリットです。

④ビーコン

ビーコンは、「Bluetooth Low Energy(BLE)」を利用した端末です。スマートフォンアプリがビーコン電波をキャッチすることで位置情報を取得します。(あらかじめビーコンが「どこに設置されているか」の場所情報を登録しておく必要があります)

電波範囲は周囲環境等にもより、強度を高めても最大100m程度と限られていますが、範囲内における精度は比較的高く、「地下」や「ビルの何階の、どのフロアの、どのお店に」といったGPSが苦手な部分もカバーします。電波発信の間隔は調整可能です。ただし、利用できるビーコン端末があること、ビーコン電波をキャッチするスマートフォンアプリを通して利用許諾がとれている&BluetoothがONになっているなど、クリアすべき前提条件が存在します。

人流データの活用例:マーケティング編

マーケティングにおいては需要予測や商圏分析はもちろん、位置情報技術を活用することで店舗の来店計測を行い、本来難しいとされてきたデジタル広告の集客効果を明らかにできるなど広告・販促領域にも応用可能です。

人流データ活用により利益増加につながるさまざまな打ち手を、効果を数値化しながら実施できます。また、店舗や施設運営の場面でも、人々の導線を把握したり混雑を可視化したりとレイアウトや人員配置最適化に貢献します。

■小売店/外食での活用例【商圏分析/広告・販促など】

-商圏分析を行い、新規出店のエリア選定に活用
-自店舗を訪れる顧客を分析。どのエリアからどんな属性のお客様がいつ来店されているのかを把握
-分析結果に合わせて、エリアやお客様像に合わせたキャンペーンや広告配信を実施
-リアルタイムに店舗の近くにいるお客様に向けて広告を配信
-キャンペーンや広告配信の集客効果を測定
-購買データや気象データと組み合わせ需要予測や売上予測を実施し、フードロス削減

■商業施設/テーマパークでの活用例【店舗運営/混雑可視化など】

-施設内・敷地内における人々の導線を分析し、レイアウト改善や人員配置の最適化に活用
-テナント間の移動を把握し、購買行動の傾向を掴んだキャンペーンを実施
-フードコートやアトラクションなどの混雑状況を可視化
-施設来館者の行動や属性分析から、テナントリーシングに活用

人流データの活用例:まちづくり編

まちづくりでは、防災、感染症対策、インフラ整備、交通混雑の緩和などに役立てられています。また、旅行需要が回復する中で、今後は観光分野での活用も注目を集めるでしょう。不動産企業の取り組みにおいても自社施設だけでなくエリア全体を俯瞰したまちづくりへの活用が可能になっています。

参考:
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk17_000001_00003.html

■自治体/公共サービスでの活用例【防災/インフラ整備/感染症対策など】

-災害時の避難ルートの策定
-住民の移動やその手段を可視化し、誰もがアクセス可能で低炭素な交通インフラを整備
-交通事故が起きやすい場所や時間帯を特定し、パトロール強化などを実施
-地域の観光スポットの発見し、効率のよい周遊ルートを提案
-渋滞が発生しやすい場所や時間を特定。行動変容を促し、渋滞緩和
-繁華街や主要駅の人出の状況から感染症の流行を予測し、拡大予防の対策を実行

■交通機関での活用例【運行ルート改善など】

-駅や施設利用者の動線を可視化し混雑を予測
-タクシーやバスにおける需要予測。運行数やルート改善に活用

■不動産での活用例【ビル間移動の最適化など】

-エリア内における自社施設間の移動や、レストランフロア営業時間の最適化など
-自社施設と周辺の施設の同日行動を分析し、エリア単位でのまちづくりに活用
-街を訪れる人々の属性や行動パターンにあわせたイベントを開催

まとめ

人流データは、サービスの需要や売上の予測、広告・販促に役立つだけではなく、交通やインフラなどの社会活動においても重要なデータ基盤の一つになっています。

スマートフォンの普及やPC、サーバー環境の向上により人流データが規模化したことで、さまざまな分野で活用が進みました。また、新型コロナ感染拡大を契機に「人流」という言葉が社会に定着したこともその要因と言えるでしょう。

今後は、購買データや気象データなど、他のさまざまなデータと組み合わさりながらさらに活用幅を広げていくと予想されます。ぜひ引き続き人流データにご注目ください。

▼人流データもその一つとして注目されている「オルタナティブデータ」に関する解説記事はこちら▼

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